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医療商圏分析システム — 診療所開業支援のデータ基盤構築

医療コンサルティング企業向けに、診療所の開業・移転候補地を評価する商圏分析システムを設計・構築。医療情報ネット(ナビイ)の施設票・診療時間票と国勢調査500mメッシュ人口データを統合し、候補地の競合密度・診療時間ギャップ・人口構成を可視化。公開データの限界を運用(検証・補完・証跡管理)で補う設計により、意思決定に耐えるレポート品質を実現。

ROLE
データエンジニア / アナリティクスリード
TEAM
2名(設計・開発1名 + ドメインアドバイザー1名)
PERIOD
3ヶ月
  • 候補地評価の所要時間を1案件あたり平均2営業日→半日に短縮(約75%削減)
  • 同一基準での候補地比較が可能となり、提案の説得力が向上。金融機関向け融資説明にも根拠資料として活用
  • 検証・補完の運用プロセスを標準化し、ベテラン依存を解消。若手でも一定品質のレポートを出力可能に
  • 公開データ更新時の差分検知により更新作業を効率化。検証対象を変更施設に絞り込み、全数確認の負荷を回避
  • 完全ローカル動作設計により、セキュリティ審査を簡素化。クライアント社内のPC環境でそのまま稼働
TECHNOLOGIES
PythonDuckDBGeoPandasStreamlitFoliumH3pandasMatplotlib
商圏分析マップ — 候補地を中心とした500m/1km/2km圏の競合施設マッピング・人口密度メッシュ・同科目競合5施設の配置・診療時間ギャップ分析・総合評価スコア※画像はイメージです
商圏マップ: 候補地A の競合配置・人口密度・時間帯ギャップ・総合スコア
分析パイプライン全体図 — データ収集→空間集計→競合分析→検証・補完→レポート出力の5ステージ構成、DuckDB スキーマ設計(6テーブル)、意思決定レポート構成(5ページ)、更新・運用設計※画像はイメージです
System Architecture: 5ステージ分析パイプライン × DB設計 × レポート構成 × 運用設計
候補地A/B/C比較レポート — 人口・競合環境・時間帯ギャップ・立地コスト・検証状況の5カテゴリ×12指標での横並び評価と推奨・次善・保留の総合判定※画像はイメージです
Decision Report: 候補地A/B/C の12指標横並び比較 × 総合判定

医療コンサルティング企業(開業支援)において、診療所の出店候補地評価が属人的な作業に依存していた。競合調査と人口確認は毎回手作業で、地図作成・資料作りにベテランの稼働が溶け、案件が並ぶと品質が落ちる状態だった。一方で、患者の詳細データは取得できず、公開データ(医療情報ネットの施設票・診療時間票、国勢調査500mメッシュ人口等)には古さや誤りが混在するため、精密な需要予測で勝負する路線は現実的ではなかった。必要だったのは「予測の精度」ではなく、候補地を比較可能な同一基準で評価し、根拠と注意点を明示した意思決定レポートを安定的に供給する仕組みだった。

データが薄い環境を前提に、「比較と理由」で意思決定を支える設計方針を採った。

1. データ収集・統合 医療情報ネット(ナビイ)オープンデータから施設票・診療時間票を取り込み、国勢調査の500mメッシュ人口データ(年齢5歳階級別)および国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来人口推計と統合。DuckDBに6テーブル構成で格納し、1ファイルで完結するポータブルなDB設計とした。

2. 空間分析 候補地を中心に500m/1km/2kmの商圏を描画し、圏内の人口(年齢階級別)・競合施設数・競合密度(同科目/万人)を自動算出。GeoPandas + H3で空間集計を実装した。

3. 競合分析 同科目競合の診療時間を曜日×時間帯マトリクスで整理し、「土曜午後」「平日夜間」「日曜祝日」などの空白時間帯を特定。開業時の差別化ポイントとして提示できる設計とした。

4. 検証・補完の運用設計 公開データの限界を「仕組み」で補う設計を重視。上位競合については電話・Web確認で実態を検証し、facility_overridesテーブルに修正値・確認日・根拠を記録。「直した事実をデータとして残す」ことで、レポートの信頼性と再現性を担保した。

5. レポート自動生成 候補地比較(A/B/C横並び)、商圏マップ、競合一覧、リスク・注意事項、データ出典の5ページ構成でPDFレポートを自動生成。未検証項目や免責事項を明示し、「患者数を断言しない」設計で揉めにくいレポートを実現した。

更新運用は公開データのスナップショット更新に合わせ、差分検知(前回→今回の増減・変更施設を自動抽出)で検証対象を絞り込む仕組みを整備。完全ローカル動作(背景地図は同梱データで生成し外部タイル不使用・患者データ不使用)でセキュリティの説明コストも最小化した。